聖書ギリシア語の夕べ

日本聖書神学校の聖書ギリシア語通信講座でコイネー・ギリシア語を勉強しています

9)ギリシア語のアクセントの位置を制限する規則(制限規則) 13

ギリシア語のアクセント>

 鋭アクセント( ´ ):普通のアクセント(高く読む)。

 重(低)アクセント(  ):語末の鋭アクセントが変化したもの。実質無アクセント。

 語末に鋭アクセントを持つ単語の後ろに単語が続く時、鋭アクセントが重アクセントに変化する。そのため最後の音節だけにつく。

 曲アクセント( ῀ ):長母音と二重母音だけにつく。前半を高く、後半を低く読む。

 

 音節とは母音を中心とした音のかたまり。母音の数だけ音節がある。

 ギリシア語には後ろから3番目までラテン語の音節名が付けられている。

 

 ἄνθρωπος  ἄνθ/ρω/πος 

 

 πος 後ろから数えて1番目が ウルティマ

 ρω  後ろから数えて2番目が パエヌルティマ

 ανθ  後ろから数えて3番目が アンテパエヌルティマ

 

 ギリシア語のアクセントはこのいずれかにつく。

 

 

<アクセントの基本>

 

 1)鋭アクセントは、最後の音節から数えて3音節以内につく。

 2)重アクセントは、最後の音節(ウルティマ)のみにつく。

 3)曲アクセントは、最後の音節から数えて2音節以内につく。

 

 アクセントは、なるべく単数・主格(見出し語)のアクセントを保とうとするため、基本的に格変化しても位置は変わらない。

 アクセントは、最後から3音節以内につく(ウルティマ、パエヌルティマ、アンテパエヌルティマのいずれかにつく)。

 アクセントは、アクセント規則で変更せざるを得ない時、前の音節につこうとする。 

 

 

<アクセントの規則>

 

 ギリシア語にはアクセントに関し3つ規則がある。

 この規則のため、単語の活用に伴いアクセントの種類や位置が変わることがある。

 

<規則1>

 鋭アクセントは、語末から数えて3音節以内につけることができる。

 しかし、語末音節の母音に長母音や二重母音がくると語末から数えて3音節目につけることができない。その場合、鋭アクセントは2番目の音節に移動する。

 

 規則1・例 ἄνθρωπος(人間)

主格 ὀ  ἄνθρωπος   語末が短母音(ο)なので、アクセントの変更なし。

属格 τοῦ  άνθρώπου  語末が二重母音(ου)なので、アクセントは後ろの音節へ。

与格 τῷ   ἀνθρώπῳ   語末が長母音(ῳ)なので、アクセントは後ろの音節へ。   

対格 τὸν  ἄνθρωπον 語末が短母音(ο)なので、アクセントの変更なし。

 

 

<規則2>

 曲アクセントは、語末から数えて2音節以内につけることができる。

 しかし、語末音節の母音に長母音や二重母音がくると、曲アクセントは語末から数えて2音節目の音節につけることができない。その場合、曲アクセントは鋭アクセントに変わる。

 また、語末音節が短母音で語末から数えて2番目の音節に長母音がくる場合、2番目の音節につけるアクセントは曲アクセントとなる。

 

 規則2・例 νῆσος(島)

主格 ἠ  νῆσος   語末が短母音(ο)なので、アクセントの変更なし。

属格 τὴς  νήσου 語末が二重母音(ου)なので、鋭アクセントに変更。

与格 τῇ   νήσῳ   語末が長母音(ῳ)なので、鋭アクセントに変更。

対格 τὴν νῆσον  語末が短母音(ο)なので、アクセントの変更なし。

 

<規則3>

 語末から数えて2音節以内にある母音が “長母音+短母音” または “二重母音+短母音” である時、語末から数えて2番目の音節につけるアクセントは曲アクセントになる。

 

 規則3・例 πολίτης(市民)ιは短音と長音の区別がないが、ここのιは長い母音

主格・単数 ὀ  πολίτης  “長母音+長母音” なので鋭アクセント。

主格・複数 οἰ  πολῖται αιは短母音扱い。“長母音+短母音” で曲アクセントになる。

 

 

<規則1、規則2、規則3に共通する注意>

 ただし、語末の οι と αιは二重母音にも関わらずアクセント規則をみるときは短母音として扱う。そのため語末にοι と αιがきた場合も、語末から数えて3音節目に鋭アクセントをつけることができる。ただしοιςとαιςのように後ろにςがつくと、二重母音とみなす。

 

 

<その他の留意事項>

 動詞のアクセントはアクセント規則が許す限りできるだけ語頭へさかのぼろうとする。

※アクセント規則により、アンテパエヌルティマ(語末から数えて3番目の音節)よりさかのぼれないのでアンテパエヌルティマにつこうとするとの意味。