7)新約聖書ギリシア語の単語の決まり7ヵ条 11
1)単語の頭に母音がきたときは気息記号がつく
無気音( ᾽ )は発音しないが、有気音( ῾ )はhの子音がつく。
ἀδελφός( アデルフォス )兄弟
ἁμαρτία( ハマルティア ) 罪
2)二重母音は二番目の母音の上に気息記号がつく
二重母音(母音が重なるもの)が単語の頭にきた時は二番目の母音の頭に気息記号をつけるが、有気音の場合は前の母音にhの子音をつけて発音する。
αὐτό( アウト ) それ
εὑρίσκω( ヘウリスコー ) 見出す
3)アクセント記号を表記する
ギリシア語は単語にアクセント記号をつけて表記する(かなり面倒だが仕方ない)。
鋭アクセント( ´ ):普通のアクセント(高く読む)。
重(低)アクセント( ` ):語末の鋭アクセントが変化したもの。実質無アクセント。
語末に鋭アクセントを持つ単語の後ろに単語が続く時、鋭アクセントが重アクセントに変化する。そのため最後の音節だけにつく。
曲アクセント( ῀ ):長母音と二重母音だけにつく。前半を高く、後半を低く読む。
4)アクセントは高低アクセント
現在ギリシア語は英語と同じ強弱アクセントだが、コイネー時代のギリシア語は日本語と同じ高低アクセント。
そうはいうものの強弱なのか高低なのか区別は難しい。
また鋭アクセント、重アクセント、曲アクセントなど区別できない。
そこまで厳格でなくてもよい。
アクセントは基本的に1単語に1カ所つく。
ただし後接語(アクセントのない単語)や前接語によるアクセントの受け渡しで、前接語のアクセントが消え前接語の前の単語に2カ所つくなど、例外はある。
後接語:冠詞 ὁ のようにアクセントを持たず後ろの単語とセットで発音される単語。
単独で発音することはできず必ず後ろに単語をともなう。定冠詞、前置詞。
前接語:前の単語とセットで発音される単語。
前接語はアクセントを前の単語に受け渡すことがある。
鋭アクセントも曲アクセントも少し長く伸ばす程度しか発音できない。
ただアクセントがあることだけはおさえておく必要がある(鋭アクセントの位置で意味が違う単語、τιςなどがある)。
5)語末のシグマ(σ) は語末形のシグマ(ς)を使う
シグマは大文字は1つ(Σ)だが、小文字は語末とそれ以外(σ ς)の2つがある。語末形は語末のみに使用。また普通のシグマは語末には使用できない。
6)後ろにくる文字で発音が変わる文字がある
γ : κγχξが後ろにくる γ は ν(n)の発音になる。
σ: βδγμが後ろにくる σ は はz(濁音)の発音になる。
7)下書きの ι (イオータ) は発音しない
古典期のギリシア語では下書きのイオータを読むが、コイネー時代のギリシア語では下書きの ι (イオータ) は発音しない。
下書きの ι (イオータ)とは、ᾳ ῃ ῳ にある( ι )のこと。
下書きの ι (イオータ)は長母音の下につき、古典期はそれぞれ「アーイ」「エーイ」「オーイ」と発音するが、コイネー時代からは「アー」「エー」「オー」と母音のみ発音し下書きの ι (イオータ)は発音しなくなった。
ただし下書きの ι (イオータ) がつくのは長母音なので、短母音と長母音の区別のない文字 α は、下書きの ι (イオータ) がつけば、長母音と判断できる。