聖書ギリシア語の夕べ

日本聖書神学校の聖書ギリシア語通信講座でコイネー・ギリシア語を勉強しています

10)新約聖書ギリシア語の文法の決まり15ヵ条 14

 

1)名詞には、性、数(単・複)、格(5つ)がある

 

 ギリシア語は名詞の格により主語か目的語かを見分ける。

 これは一般名詞だけでなく固有名詞にも格がある。ただし、固有名詞は固有なので単数形のみ。固有名詞の性は実際の性別。

 

 

2)単語には語幹と語尾があり語尾は変化する

 

 ギリシア語の単語には語幹と語尾があり、語尾は性、数、格に応じて変化する。

 ἐιμίなど一部の例外を除き語尾の変化形は決まっているので、それを覚えればよい。日本語の単語には後ろに助詞がつくが、ギリシア語ではその助詞にあたるのが語尾といった感じ。

 

 

3)コイネー時代のギリシア語に不定冠詞はない

 

 新約聖書ギリシア語には不定冠詞(英語の“a”)はない。冠詞は定冠詞のみ。

 「ある◯◯が」と表したい時は、冠詞をつけずそのまま「◯◯」と表記するか、「◯◯  τις」と不定代名詞のτις(冠詞ではない)をつける。※現在ギリシア語では、不定冠詞として1を意味するἐναςをつける。

 

 

4)定冠詞には、性、数(単・複)、格(4つ)がある

 

 英語ではthe一つだが、ギリシア語では、名詞の性、数、格により変化する。

 定冠詞の格が4つなのは、定冠詞は呼格の名詞につかないからである。

 

 

5)定冠詞は一般名詞だけでなく固有名詞にもつく

 

 英語では固有名詞の前には定冠詞はつかないが、ギリシア語では定冠詞がつく。人の名前の前にも定冠詞がつくので注意。

 

 

6)定冠詞と名詞の間に後置詞が入ることがある

 

 後置詞は文頭に置けない決まりになっているため、それが文頭にくる場合、無理やり定冠詞と名詞の間に入ってくる。定冠詞が後置詞にかかり、それに続く名詞には冠詞がつかないように見えるので注意。

 後置詞:文頭に置くことができず、2番目に置かれる単語

 

 

7)形容詞には、性、数(単・複)、格(5つ)がある

 

 形容詞はそれぞれ性、数、格の一致する名詞を修飾する。その形容詞がどの名詞を修飾しているか分からない時は、その形容詞と性、数、格が一致している名詞を探す。

 

 

8)形容詞には定冠詞がつく場合とつかない場合がある

 

 形容詞に定冠詞をつけ名詞の直後に置き、後ろから名詞を修飾する場合、定冠詞と名詞の間に形容詞を入れ、後ろの名詞を修飾する場合、その形容詞は名詞の属性を表す形容詞。(形容詞の属性的用法)※限定用法とも言う。

 形容詞に定冠詞がつかない場合かつ定冠詞と名詞の間に置かれていない場合、その形容詞は、その文章の補語になるか、動詞を省略し単独で述語になる。(形容詞の述語的用法)※述語用法とも言う。

 主語となる名詞にはたいてい定冠詞がつく。

 

 

9)形容詞は名詞として使うことができる

 

 形容詞は前に定冠詞を置き名詞として扱うことができる(形容詞の名詞化)。形容詞“美しい”に定冠詞をつけ“美しい人”の意味とするなど。

 

 

10)副詞には性・数・格はない

 

 形容詞は名詞を修飾するため、名詞に合わせ性・数・格の変化があるが、動詞または文全体を修飾する副詞にはこれらがない。

 

 

11)品詞と格で単語の役割を区別する

 

 主語になれるのは主格の名詞。

 述語になれるのは動詞か冠詞のつかない形容詞。

 目的語になれるのは与格か対格の名詞。

 補語になれるのは主格の名詞か冠詞がつかない主格の形容詞。

 属格の名詞は他の名詞の修飾語になる。

 ※名詞化した形容詞は名詞として扱う。

 

 

12)語順は、基本の配置はあるが、かなり緩やか

 

 新約聖書ギリシア語の基本的な文型は主語(S)目的語/補語(O/C)動詞(V)のSOV型(日本語と同じ)だが、そうでないことが多いので、あてにならない。

 

 

13)前置詞は後ろにとれる名詞の格が決まっている

 

 前置詞の後ろには決まった格の名詞がくる(前置詞の格支配)。

 前置詞は名詞をくっつき前置詞句を形成する。前置詞句自体には性、数、格はない。

 前置詞は1つの格の名詞しかとれないものから複数の格の名詞がとれるものまである。複数の格の名詞がとれる前置詞は、名詞の格によって意味が変わる。

 

 

14)最後が ι で終わる動詞には、ν がつくことがある

 

 ἐιμίの変化形、ἑστίとἐισίは、文章の最後にくる場合と次の単語の頭文字が母音の場合は、基本的にνをつける。

 

 

15)基本的に文頭も小文字

 

 英語のように文頭を大文字で書く規則はない。基本的に文頭も小文字。ただ必要に応じて大文字で書く時もある。