1)新約聖書をギリシア語で読んでみよう ヨハネの福音書の冒頭 Ἐν ἀρχῇ ἦν ὁ Λόγος, 9
新約聖書ギリシア語独習の教科書では、意味がわからなくてもいいから、とりあえずギリシア語の聖書に触れてみようといったコーナーがある。
超がつくぐらい有名な箇所だが、ギリシア語で読むとさっぱり分からない。
ギリシア語の音を楽しむぐらいの感覚で読んでみた。
1. Ἐν ἀρχῇ ἦν ὁ Λόγος, καὶ ὁ Λόγος ἦν πρὸς τὸν θεόν, καὶ θεὸς ἦν ὁ Λόγος.
エン アルケー エーン ホ ロゴス 、 カイ ホ ロゴス エーン プロス トン セオン 、 カイ セオス エーン ホ ロゴス 。
2. Οὖτος ἦν ἐν αρχῇ πρὸς τὸν θεόν.
フートス エーン エン アルケー プロス トン セオン。
3. πάντα δἰ αὐτοῦ ἐγένετο, καὶ χωρὶς αὐτοῦ ἐγένετο οὐδέ ἕν.
パンタ ディ アウトゥ エゲネト 、 カイ コーリス アウトゥ エゲネト ウデ エン。
4. ὅ γέγονεν ἐν αὐτῷ ζωὴ ἦν, καὶ ἡ ζωὴ ἧν τὸ φῶς τῶν ἀνθρώπων῾
ホ ゲゴネン エン アウトー ゾーエー エーン、カイ ヘー ゾーエー エーン ト フォース トーン アンテローポ-ン。
5. καὶ τὸ φῶς ἐν τῇ σκοτία φαίνει, καὶ ἡ σκοτία αὐτὸ οὐ κατέλαβεν.
カイ ト フォース エン テー スコーティア ファイネイ、 カイ ヘー スコティア アウトゥ ウ カテラベン。
1. 初めに、ことばがあった。ことばは神とともにあった。ことばは神であった。
2. この方は、初めに神とともにおられた。
3. すべてのものは、この方によって造られた。造られたもので、この方によらずにできたものは一つもない。
4. この方にいのちがあった。このいのちは人の光であった。
5. 光はやみの中に輝いている。やみはこれに打ち勝たなかった。
(新改訳聖書2003年版)
この聖句の中で、1節、“πρός(プロス)” を日本語訳では “ともに” と訳している。
しかしギリシア語の前置詞 “πρός(プロス)” は、“ともに”というより、“へ向かう” という意味あいの前置詞であり、実際はうまく訳せない。
ラテン語訳では原語の通り訳しているそうだが、16世紀の宗教改革の時、あの有名なマルティン・ルターが聖書をドイツ語に訳すにあたり、ミッテ(ともに)と訳し、その後、欽定訳聖書(17世紀・英語)もそれにならい、その流れで日本語聖書でも “ともに” となっている。
また新改訳では “Λόγος(ロゴス)” を “言葉” ではなく “ことば” とひらがなで訳し、単純に言葉ではないことを示そうとしている。
実際、ギリシア語で単純に言葉(単語)と言う時は “ῥῆμα(レーマ)” を使う。
この “Λόγος(ロゴス)” という言葉が本当は何を指すのか?
英語の~logy(学問の部門名の後ろにつく)の語源、深い意味がありそうだ。